その場しのぎの嘘は、一つ一つが小さい。昼に何を食べたか、誰と会ったか、なぜ連絡しなかったか。単体なら流せる範囲のものが多い。
それでも消耗するのは、嘘そのものより、嘘で回避された会話のほうが積み上がっていくから。話すはずだったことが、一度も話されないまま消えている。
問題を一つずつ分けて、こちらがどう動くかまで決めよう。読み終わる頃には、次に試すことが決まっている。
その場しのぎの嘘は、なぜ気になるのか
大したことじゃない、と自分に言い聞かせながら、気持ちが晴れない。この状態には理由がある。
内容は小さいのに、信用が削られる
嘘の重さで判定しようとすると、毎回結論が出ない。内容が軽いので、怒るほどではない気がする。
ただ、信用は内容の大きさではなく、回数で減っていく。小さい嘘が十回あると、大きい嘘が一回あるより疑いが強くなることもある。
何を信じていいか分からなくなる状態は、内容とは別の場所で起きている。
嘘によって、会話が一つずつ回避されている
嘘の機能は、その場を通り抜けること。つまり、こちらとの間で起きるはずだった摩擦を、話し合わずに済ませている。
遅れた理由を正直に言えば、そこで一度やり取りが発生する。嘘なら、それが発生しない。
毎回回避されると、本来なら話されていたことが一つも処理されないまま溜まる。関係が薄くなっていく感覚の出どころは、ここにある。
嘘の内容ではなく、回数を数える
今日やるのは数えること。この一か月で、嘘だと分かったことが何回あったか。
内容の大きさは書かなくていい。回数だけ。
一回か二回なら、誰にでもある範囲。十回を超えるなら、習慣として動いている。数字にすると、自分の感覚が正しかったかどうかが分かる。
なぜ、嘘が最初の選択になるのか
動機を分けておこう。
動機は五つに分かれる
一つ目、怒られたくない場合。叱責を避けるために、その場を切り抜ける。
二つ目、話し合いが面倒な場合。正直に言うと説明や交渉が必要になるので、省略している。
三つ目、悪く思われたくない場合。だらしない自分、忘れていた自分を見せたくない。
四つ目、嘘で通り抜けた経験が積み重なっている場合。うまくいった方法は繰り返される。
五つ目、大きな問題を隠している場合。これは後の項目で分けて扱う。
一つ目から四つ目までは、相手の人格の問題というより、その場の処理として選ばれている。
正直に言った時に何が起きたかで、次が決まる
人は、正直に言って困ったことになった経験があると、次から言わなくなる。これは相手の家庭や過去の関係で作られていることが多い。
ここで気をつけたいのは、こちらのせいだと結論づけないこと。嘘をつくかどうかを決めているのは本人で、こちらに責任があるわけではない。
ただ、正直に言われた時にどう反応しているかは、確認しておく価値がある。変えられるのは、こちら側の反応のほうだから。
正直に言われた時の反応を思い出す
やることは思い出す作業。相手が正直に言ってきた場面で、自分がどう返したか。
責めたか。理由を聞いたか。分かった、で済ませたか。
責めていたなら、次から言いにくくなる。ただし、それは嘘を許す理由にはならない。ここは分けて置いておこう。
問い詰めると、嘘が増える
多くの人が経験する現象を扱う。
追い詰められると、辻褄合わせが始まる
嘘を指摘されると、認めるか、重ねるかの二択になる。認めるのは、その場で負けを引き受けることになる。
重ねるほうが、その瞬間は楽になる。だから、追い詰めるほど新しい嘘が出てくる。
私も経験がある。その場しのぎの嘘をつく相手と付き合っていた時期があった。内容はどれも小さかった。昼に何を食べたか、誰と会ったか。嘘をつく必要がないことまで。
問い詰めるたびに、彼はさらに嘘を重ねた。話が複雑になるだけで、何も解決しなかった。
確認ではなく、事実だけを置く
問い詰めると辻褄合わせが始まるので、質問の形にしないほうがいい。
なんで嘘つくの、と聞くと、相手は答えを作る。作った答えが、また嘘になる。
代わりに、事実だけを置く。さっきの話、違ってたよね。これだけ言って、返事を待たない。
責めてもいないし、質問もしていない。それでも、気づいていることは伝わる。
問い詰める代わりに、一度だけ事実を言う
やることは一回だけ。次に気づいた時、質問せずに事実を一言置く。
反応は気にしなくていい。認めても、流しても、こちらは同じ態度でいる。
これを何度か繰り返すと、嘘が通りにくい相手として認識される。追い詰めるより効くことがある。
大きな嘘も隠されているのではないか
小さい嘘が続くと、この疑いが出てくる。
小さい嘘と、隠しごとは別のもの
その場しのぎの嘘は、瞬間を通り抜けるためのもの。準備されていないし、計画もない。
隠しごとは違う。継続的に事実を伏せる行為で、つじつまを合わせる作業が続く。こちらのほうが手間がかかる。
小さい嘘が多い人が、大きい隠しごとをしているとは限らない。逆に、普段は正直な人が大きなものを隠していることもある。両者は連動しない。
分ける基準は、金と他の相手と安全
疑うなら、領域を絞ろう。
金の話。収入、借金、使い道。ここに嘘があるなら、生活に直結する。
他の相手の話。誰と会っているか、連絡しているか。
そして、こちらの安全に関わる話。健康、住んでいる場所、仕事の実態。
この三つ以外の嘘は、腹は立っても、生活を壊すものではない。優先順位をつけておくと、全部を疑わずに済む。
三つの領域だけ確認する
やることは範囲の限定。この三つについて、気になることがあるかを書き出す。
何もないなら、今は小さい嘘の問題として扱えばいい。あるなら、そこだけ確認する。
全部を疑うと消耗するので、範囲を決めるのは自分を守る方法にもなるよ。
治るのかどうか
一番知りたいのはここだと思う。
変わる人と、変わらない人がいる
正直に言っても大丈夫だと分かると、嘘が減る人はいる。時間はかかるけれど、変わる場合はある。
一方で、何年経っても変わらない人もいる。本人の中で習慣として定着していると、指摘されても続く。
相談を受けた女性は、三年間、嘘を指摘し続けた。関係は変わらなかった。彼女だけが消耗していたから変わらないならスパッと判断するのもアリだよ!

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