守りたい。この言葉が成立するには、守る側と守られる側という配置が要る。言った本人にその意識がなくても、言葉の形がそうなっている。
だから、嬉しさと引っかかりが同時に来る。大事にされている実感と、下に置かれた感覚が、同じ一言から発生する。
感覚を一つずつ分けて、判定材料まで見ていこう。読み終わる頃には、返す一言が決まっている。
守りたいと言われて、素直に喜べない
言われた瞬間は嬉しかった。それなのに、後から少し息が詰まる。この感覚を持った人へ。
この言葉には、上下の配置が含まれている
守るという動詞には、方向がある。守る人がいて、守られる人がいる。対等な並びにはならない。
好きだ、という言葉には方向がない。一緒にいたい、も同じ。どちらも横に並んだ形で成立する。
守りたい、は違う。前に立つ人と、後ろに置かれる人ができる。ここが引っかかりの出どころになる。
嬉しさと引っかかりは、同時に成立する
私も言われたことがある。嬉しかった。同時に、なぜか息が詰まった。
その理由が分からなくて、自分がひねくれているのかと思った。素直に喜べない性格なのかと。
後から分かったのは、私は守られたかったのではなく、一緒に立っていたかったということ。言葉の方向が、自分の望みと合っていなかっただけだった。
引っかかったのは、愛情を疑ったからじゃない。配置の問題だった。
どちらの感覚が強いか分ける
今日やるのは仕分け。嬉しさと引っかかり、どちらが大きかったか。
嬉しさが大きいなら、そのまま受け取っていい。引っかかりが残っているなら、その理由を次の項目で見ていく。
紙に書くだけなので、誰にも何も伝わらない。
言葉の中身は、四つに分かれる
同じ言葉でも、指しているものが違う。
実際の行動、気持ちの表現、自分の願望、範囲の制限
一つ目、具体的に守る意思がある場合。困った時に動く、生活を支える、面倒なことを引き受ける。行動が伴う形。
二つ目、大事に思っていることの表現として使っている場合。比喩に近い。特に何をするつもりもないけれど、気持ちは本物。
三つ目、自分が守る側でいたいという願望。相手が誰かはあまり関係なく、その役割を担いたい状態。
四つ目、相手の行動範囲を狭めたい場合。守るという理由が、制限の入り口になる形。
四つとも、言葉としては同じになる。言われた時点では分けられない。
言った時点では、どれか分からない
だから、その場で判定しようとしなくていい。分けるのは後からでいい。
判定材料は、言った後に出てくる。何が増えたか、何が変わったかを見ればいい。
言葉ではなく、その後の生活で分かれる。
その後に何が増えたか見る
やることは観察。あの言葉の後、何が増えたか。
具体的な手助けが増えたなら一つ目。何も変わらないなら二つ目。相手が自分の話をする回数が増えたなら三つ目。こちらへの確認や制限が増えたなら四つ目。
増えたものを見るだけで、かなり分かれる。
言葉だけで、何も変わらない
二つ目に当たった人へ。
守るには、具体的な行動が要る
守りたい、という気持ちは本物でも、それだけでは何も起きない。
守るという行為には中身がある。時間を使う、金を使う、面倒を引き受ける、自分の予定を動かす。どれかが伴って初めて、守っている状態になる。
言葉だけが続いて、生活が何も変わらないなら、それは気持ちの表明として受け取るのがちょうどいい。悪いことではないけれど、期待の置き場所は変えたほうがいい。
言葉が先行する人と、行動が伴う人
言葉が出やすい人はいる。感情を口に出すのが得意で、そこで満足してしまうタイプ。
逆に、何も言わないのに実際に動いている人もいる。言葉が少ないぶん、行動が全部を担っている。
どちらが本物かは、言葉の量では決まらない。
言われた後の一か月を振り返る
やることは振り返り。言われてから一か月で、実際に何が変わったか。
会う頻度、連絡の内容、困った時の対応、予定の優先順位。何か一つでも動いたか。
何も動いていないなら、言葉が先行しているだけ。それを踏まえて付き合えばいい。
守るという理由は、制限を正当化しやすい
ここは注意して見ておきたい部分になる。
心配だから、が断りにくい形を作る
守るという言葉には、便利な性質がある。制限に理由を与えられること。
危ないから夜は出歩かないで。心配だから連絡して。その集まりには行かないほうがいい。
どれも、こちらを思っての言葉に見える。だから断りにくい。断ると、心配を無下にした形になる。
相談を受けた女性は、守りたいと言われて喜んでいた。半年後、行けなくなった場所と、会わなくなった人が増えていた。全部、心配だから、という理由が付いていた。
増えているのが安全か、制限かを見る
分ける基準は簡単で、こちらの選べる範囲が増えたか減ったか。
守られて選択肢が増えたなら、支えになっている。守られて選択肢が減っているなら、制限として働いている。
同じ言葉でも、結果がまるで違う。
やめたことを数える
やることは数えること。あの言葉が出てから、やめたことがいくつあるか。
会わなくなった人、行かなくなった場所、しなくなったこと。ゼロか一つなら、まだ範囲の中。三つ以上出てくるなら、一度立ち止まって見ていい。
数えるだけなので、誰にも気づかれない。
守られたくない自分は、おかしいのか
最後に、この疑問を扱っておきたい。
自立している人ほど、居心地が悪くなる
自分で判断してきた人、一人で回してきた人ほど、この言葉に違和感を持ちやすい。
守られる側に置かれると、それまで自分でやっていたことを、できない人として扱われる感覚になる。愛情として受け取りたいのに、体が先に構える。
これは感謝が足りないのではなく、配置が合っていないだけ。責める必要はない。
求めているのは、同じ側に立つこと
私の場合、欲しかったのは守ってくれる人ではなかった。同じ方向を向いて、一緒にやる人だった。
そう気づいてから、相手に伝えた。守られるより、一緒にやりたい、と。
その人は、言葉を変えてくれた。守りたい、ではなく、一緒にやろう、に。それだけで息が詰まらなくなった。中身は変わっていなかったのに。
望んでいる言葉を、自分で作る
やることは一つ。自分が言われたい言葉を、自分で作る。
一緒にやろう、味方でいる、そばにいる。守るという方向が入っていない言い方はいくらでもある。
言われるのを待つのではなく、こちらから示すほうが早いです。

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